なんか好きなものについて、ちょっと書いてみよう

本、マンガ、映画、舞台、美術館、旅行。なんでも好きです。好きだなーと思ったものについて、書いて留めようと思います。

『三度目の殺人』是枝裕和

面白かったー。
良い人間ドラマでした。
重盛と三隅の共通点があり、重なるところがありつつも、決定的に違う。
それが実に面白い。

これは重盛と三隅が共犯になり、三隅自身を殺し、咲江を守る話。
パンフレットの表紙、返り血を浴びた重盛と咲江、そして何かを振り下ろす三隅。
真ん中に横たわる死体はおそらく三隅自身のものなのだろう。

もう一度見ながら三隅の心の動きを追いたい気もする。
最初は自分はどうでもよかったのか?
できれば、生き延びたかったのか?
保険金殺人だと偽ったのは、被害者の妻に報いを受けさせるため?でも、それでは咲江も困るはず…?

娘とうまくやれなかったことを悔やみ、その代わりを咲江に求めた三隅。
重盛もやはり娘の由佳と咲江を重ねていたのだろう。
その二人は真実を知った上で封じ込めてでも、咲江を守ろうとした。
それがいいことなのかは、ともかくその覚悟を決めてやりきった二人の緊迫感ある演技は最高でした。

あと、間違っているかもしれないけど、重盛が三隅との共通点と決定的な差に気がつく接見のシーンが好き。
三隅が「この世には死んだほうがいい人間がいる」と重盛に言うシーン。自分がかつて後輩に言ったセリフを言われることで重盛は三隅との共通点に気づく。
そのシーンで、ガラスに写る三隅の顔が重盛と徐々に重なって、二人のつながりを強く暗示していく。
でも、最後に三隅が「人を裁いてみたかった」と言った瞬間に重なっていた顔が大きくずれる。
これは、「裁くもの」である三隅と「傍観者」である重盛の決定的な違いを暗示しているんじゃないかと勝手に思っている。