なんか好きなものについて、ちょっと書いてみよう

本、マンガ、映画、舞台、美術館、旅行。なんでも好きです。好きだなーと思ったものについて、書いて留めようと思います。

『虚仮威』柿喰う客

虚仮威ってこう書くんだな……。
知らなかったわ。

 

女体シェイクスピア以外の柿喰う客はより久しぶり。

今回は大正というやけに賑やかで日本の文化と西洋の文化がぶつかり合ってるような時代での家族劇。
家族の形、自分の本当の望み、女性差別あたりがテーマになるのだろうか。
コミカルな演技とアクロバティックな身体表現は相変わらず見事。
ただ、そのあたりは楽しめたけど、ストーリーはそこまで心に刺さらず。

 

※ネタバレ注意

世界征服するとか言いつつ、そのために何か具体的にやってるわけでもなし。
サンタを捕まえるのも、結局サンタの目的もそこまで意外ではなく。
座敷童の話も嫌いじゃないけど、残念ながら扱いが軽く。
オチにあたる主人公の正体(?)もあまりびっくりもせず。
(ラストシーンでお父さんが「何が悪かったのだ?」と問うシーンでは思わず「いや、悪いのはお前だよ」と心の中でつっこんでしまった。)
一番最後の夫婦の話も、どっかで聞いたような話と思ってしまった。

 

強いて言えば、最後の父親からサンタへの宣言だけはちょっと面白かったかな。
親が子どものほしいものを一番わかる存在でありたいという宣言は、親になって子どもを育てている中屋敷さん自身の決意なのかな、なんて勝手なことを思った。

一つ一つのシーンは見応えがあるのだけど、全体としてのクライマックスにあまり乗れず、テーマが混在しすぎていてずっしり心にくるものは残らず。
そんな感じでした。

『RENT』20th Anniversary Tour

理屈抜きに最高。
2016年の締めくくりに見てきました。
なんでこんなにも心揺さぶられるかわからん。
言葉にならないほどに歌が好きで、Rentがかかった瞬間から涙が出そうになった。
Seasons of loveの素晴らしさは言うまでもなく。最高でした。

 

今まで割とスルーしてたけど、Goodbye Loveでの、ロジャーからマークへの叱責が胸に刺さったわ……。

Mark hides in his work
From facing your failure
Facing your loneliness,
Facing the fact you live a lie
(マークは仕事に隠れてる
自分の失敗から
自分の孤独から
自分が嘘ついて生きてるって事実から)

生で見ると所々でマークの孤独や情けなさが際立つ。
最後まで彼にパートナーはいないわけだけど、これからも生きていくはずの彼はきっと理想を語りながら共に生きる家族を見つけるんだろうな。そう信じたい。

 

群像劇なので当たり前なのかもしれないけど、1人が歌ってる歌でも、その場にいないだれかの心情にリンクしていくのが非常によい。
Without youとかはそれが顕著。

 

RENTのラストって何も解決されないっちゃされない。
ミミが一命をとりとめたとは言え、ウイルスは残ってるわけだし、ロジャーも同様にいうAIDSが発症してもおかしくない。マークは相変わらず1人。
でも、ロジャーはミミのために曲を一つ書き上げ、マークは自分の理想の映画を一本完成させる。
そうやって、自分の理想を求めつつ、その日その日を生きていく。
エピローグなどを用意せず、1年間の彼らだけを描くことで、未来も過去もない、ただ今だけがある、No day but today.の精神をきっちり見せてくれる。

 

あーーー、変なこと言おうとするのやめよう。
ともかく最高。

『スター・ウォーズ ローグ・ワン』ギャレス・エドワーズ

様々な思惑が巡る序盤から、多数の人が命を賭して希望を繋ごうとする終盤まで終始最高に面白かった。興奮の震えが収まらない。

俺の大好きなチームものなんですよね、これ。
大量破壊兵器の設計者の娘、反乱軍の幹部、改造された帝国のドロイド、帝国を裏切ったパイロット、そして、立ち寄った星でたまたま助けられた戦士2人。
設計者の娘ジンは父親を探して自由を手に入れるのが目的、というか反乱軍に保護されるまでは目的などなくただ生きていればよいという思想だった。
対して反乱軍の幹部キャシアンはジンと同行して父親を探すのかと思わせておいて、実際は設計者である彼を暗殺するのが目的。
(この辺りの反乱軍の暗部が描かれているのがローグ・ワンの大きな特徴。)
そんなペアだから中盤までは信頼しあうような間柄にはならない。
他のメンバーもなんだか統一感のない、寄せ集め感が強い連中。
でも、当たり前だけど最後には一つの目的のために団結するんだよね。しかも、周囲も大きく巻き込んで。そのカタルシスが本当にヤバい。

(こっから激しくネタバレ)

そして、彼らは1人残らずこの戦いで命を落とす。その死に様がまたかっこいいんだわ、全員。
どこか情けなかったパイロットの最後とか、めちゃくちゃ強かった守護者たちの最後とか……。
そしてメインの2人の最後は言うまでもなく。
「新たなる希望」に繋ぐための死に様の美しさに心底感動しました。

アクションも満載で、ジェダイがいない分あくまで弱者でありながらチアルートもベイズも戦い方にキャラがたっていてくそかっこいい。
これゲームになったらめっちゃ楽しいんだろうな。
でも、戦争ものと思ってみると玉砕覚悟の彼らの戦いが切ないし怖い…。

暗い部分もありつつ、最高にかっこいい戦いが見れる非常によい映画でした。

『海月と私』麻生みこと

もう、ただただヒロインの魅力だけで4巻読ませる漫画。
突然いいタイミングで仲居さんとして働き始めた謎の美女の手の上で、旅館の旦那さんが転がされる話。そして、間違いなく旦那さんだけじゃなくて読者の男どもも転がす気マンマンで書かれています。
腹立つ。まんまと転がされた(笑)
いや、作中でちょっとパロッてたけど、「金麦冷やして〜〜」ばりのあざとさですよ。
旦那さんがいい年のおっさんなんだけど、料理上手でかっこいいのにちょっと情けない感じなのもいいですね。
短くてすんなり読めるので軽く楽しむにはちょうどよかったです。

『メタル・マクベス』劇団☆新感線

DVDで鑑賞。
疲れてるのもあって200分オーバーの芝居をテレビ画面で見るのは辛い…。正直後半は集中力飛んでた。
松たか子さんの演技力はすごいなーと改めて思う。ぶっとんだ演技もしっとりした演技もうまい。ここぞというところでどアップにしてくれるカメラさんも見事。クライマックスでの涙は舞台だと中々見れないよなー。あと、ラストの狂気の笑顔も見事。素晴らしい役者さんです。
マクダフって今まで見た他の公演だとそこまで魅力を感じなかったのだけど、やっぱりマクベスにトドメをさす大事な役だよね。北村有起哉さんがめっちゃかっこよかった。これからはもうちょっと注目して見ます。今までごめんなさい。
森山未來が演技、ダンスともにうまい。ダンカンの息子もそんなに着目してたキャラじゃないので、意外でした。
やっぱ役者の力は偉大だなー。

話はマクベスを未来の話に変え、さらに80年代のメタルバンドの話に絡めて、大量破壊兵器まで出してドンチャンする感じだったのだけど、正直何がしたかったのだろう…?という感じも拭いきれず……。
バンドの話が未来のマクベス(ランダムスター)の夢とリンクして狂気を演出するのは面白いっちゃ面白いんだけど、なんかやたら長くなって疲れた……。マクベス夫人に名前をつけてラスト呼ばせるくらいしか効果なかったのでは?結局ゲリラライブってどうなったの?って感じだし。もう一回見たら感想変わるのだろうけど、長すぎるので次見る時があるのかどうか…。

『羊と鋼の森』宮下奈都

高校時代、たまたま学校のピアノの調律に立ち会ったことで、調律師になることを決めた青年の物語。

淡白な主人公がもがき迷いながらも理想の音を模索する姿勢にとても好感が持てる。主人公の周りのキャラクターたちもいい人たちでとてもよい。欲張るともっともっと双子や柳さん、秋野さんのことが知りたい!続編かかれないかな?
文体が非常に凝っていて、音というとても表現しにくいものを言葉を尽くし、様々な比喩で美しく表現する筆力は素晴らしい。
主人公や和音がこれからどうなっていくのか、ぜひ知りたいので、本当に続編が読みたい。

『アルスラーン戦記』田中芳樹

アルスラーン戦記 第一部読了。
なるほど面白い。
読みやすい文体の上、何よりもキャラクターが魅力的なのがよい。
主人公の部下たちが皆一騎当千の兵で、絶対に負けないという安心感がある。
戦争もただ戦うだけでなく、策をめぐらし、食糧の管理や他国の動きを注意しながら行われる。
まあ、せっかくそうやって少ない数で立ち向かうという演出をしているのに、ダリューンナルサスが優秀すぎて「まあ、どうせ負けないんでしょ笑」という気分にもなるのだが……。
ただ、それすらも我慢して読み進められるほどにキャラが魅力的で話が面白い。
もうただそれだけだね。