なんか好きなものについて、ちょっと書いてみよう

本、マンガ、映画、舞台、美術館、旅行。なんでも好きです。好きだなーと思ったものについて、書いて留めようと思います。

『羊と鋼の森』宮下奈都

高校時代、たまたま学校のピアノの調律に立ち会ったことで、調律師になることを決めた青年の物語。

淡白な主人公がもがき迷いながらも理想の音を模索する姿勢にとても好感が持てる。主人公の周りのキャラクターたちもいい人たちでとてもよい。欲張るともっともっと双子や柳さん、秋野さんのことが知りたい!続編かかれないかな?
文体が非常に凝っていて、音というとても表現しにくいものを言葉を尽くし、様々な比喩で美しく表現する筆力は素晴らしい。
主人公や和音がこれからどうなっていくのか、ぜひ知りたいので、本当に続編が読みたい。

『アルスラーン戦記』田中芳樹

アルスラーン戦記 第一部読了。
なるほど面白い。
読みやすい文体の上、何よりもキャラクターが魅力的なのがよい。
主人公の部下たちが皆一騎当千の兵で、絶対に負けないという安心感がある。
戦争もただ戦うだけでなく、策をめぐらし、食糧の管理や他国の動きを注意しながら行われる。
まあ、せっかくそうやって少ない数で立ち向かうという演出をしているのに、ダリューンナルサスが優秀すぎて「まあ、どうせ負けないんでしょ笑」という気分にもなるのだが……。
ただ、それすらも我慢して読み進められるほどにキャラが魅力的で話が面白い。
もうただそれだけだね。

『エンバーミング』和月伸宏

エンバーミング読了。
面白いのになぜか乗り切れないのはなぜだろうと考えてみたところ、主人公3人の目的にほぼ共感ができないところだろうと思う。
復讐のためにフランケンシュタインを全て壊す。
フランケンシュタインになった少女を人間に戻す。
フランケンシュタインの花嫁を探す。
そういうのよりは、自分が成長するためとか、仲間を守るためとかのほうがやっぱり好き。
だから、リッパー=ホッパー編とかは好き。

そして、群像劇なのも相性が悪かった。
一人一人の目的に没入できないまま他のキャラクターのドラマが掘り下げられるから、誰にも深く思い入れを持たないままラストまでいってしまった感じ。

あと、和月先生の捻ったセリフ回しがちょっとくどく感じてしまう。なんでだろ?個人的には好きな類のはずなのに……。
やたら説明くさいセリフや場面が多いのもあまり好きになれないかな。
かっこいいシーンはかっこいいので、次回作に期待。
ダークな作品で、しかも主人公3人の群像劇だったことが両方あまりピンとこなかったかなー。終わってみればよく締めくくった話なんだけど。

「ダリ展」国立新美術館

ダリ展行ってきた。有名な夢の中みたいな絵以外にもいろんな作品書いてるのねこの人。
不可思議な空間に吸い込まれるような絵は見ていて気持ちがいい。
映像作品も多いので、時間はめっちゃかかる。
「アンダルシアの犬」はただ意味不明で…。謎の映像が流されていく。
「白い恐怖」は、ああダリの絵っぽいなぁって感じ。
「ディスティーノ」はダリとディズニーのコラボって感じで不思議な世界観が美しく表されていて、きれい。一番見やすかった。
もう少し体力があって体調がいいときにいけばよかった……。

以下、メモ
巻髪の少女
牧歌的で健康的なのに、エロティック

ドン・キホーテ
ダイナミックかつシンプルな風車と、ドン・キホーテの頭が爆発している絵が好き。

オフィーリア
宝飾品。きれいなんだけど、欠けている。広がる髪に狂気を感じる。

『PEACE MAKER』皆川亮二

そんなに面白くないわけではないのだけど……。

とりあえず、言葉選びがダサい。
世界観がわかりにくい。
各キャラクターの思惑がこんがらがりすぎ。
説明くさいセリフが多い。

という点でなんだか残念な印象になってしまう……。
「敵だと思っていた側が、実は世界のことを一番考えていた」って流れもアダマスと被ってるしなー。
キャラクターや絵は本当好きだし、かっこいいとこはかっこいいのだけど、ちょっぴり残念。
つーか、〇〇タルカスって名前の国が多すぎて、しかもそれの関係が意外と複雑で掴みにくい…。まあ、それ自体に意味はあるからしょうがないのかな…。いやでも多少名前変えることはできるはずだよな……。

なんだか不満の多い感想になってしまった…。

『この世界の片隅に』片渕須直

一度では咀嚼できない映画。でも、ここしばらく見た映画の中で1番心揺さぶられた気がする。

ことさらに悲惨さを煽るわけでなく、かといって凄惨さをつつみかくすわけでもなく、あの時代の広島と呉に生きる人の生活を描く作品。
何度も涙がこぼれそうになる。
すずの目から見えるものしか書かず、すずの目を通しているからこそ、どこか柔らかく優しく戦争が描かれる。
それでも、やはり失われる命や、治らない傷がごまかしようもなく表れる。

戦争の映画として見ていたけど、「この町の人はみんな誰かをなくしている」というセリフを聞いて、5年前の石巻や3年前の伊豆大島で聞いたことを思い出した。
被害の大きかった地域の人はみんな誰かしら家族や友人や知り合いを亡くしているのだと。
あの言葉は70年前の広島をさすだけの言葉じゃなくて、ここ数年で心に傷を負った様々な地域の人たちのことだし、おそらく来年再来年も起こるだろう災害を迎える人たちのことだ。

「トオリヌケ キンシ」加納朋子

加納朋子の短編集。
いろいろな病気や体質(?)の人がでてくる、優しさに包まれた話たち。
なんか、物足りないなーと思うのはなんでだろ?って思ったら加納朋子お得意のドンデン返しがあまりうまくいってないように思えるからかな。なんとなくオチが読めてしまうことが多かった。

・「トオリヌケ キンシ」
表題作。子ども2人とおばあちゃんのコミュニケーションが優しくていい感じ。
・「平穏で平凡で、幸運な人生」
共感覚の話。犯人の動機が何じゃそりゃーって感じ。旦那さんが冷静でかっこいい笑
・「空蝉」
読んでいて心にくるくらい凄惨な虐待のシーンが怖い。それに、或る日突然人の性格が一変することがあるという恐怖もしっかりある。好きではないけれど、「人間の行動は自分自身で一貫させられるものではない」ということは自分の考えに近いところもある。
・「フー・アー・ユー」
1番好きかもしんない笑。
人の顔を覚えられない病気(?)の少年と自分の見た目が気になって仕方ない少女の恋物語。よくまとまって幸せな気になれる短編。
・「座敷童子と兎と亀と」
面白いのだけど、なんとなく物足りない。お母さん随分あっさりと帰ってきたなーという感じ。一人一人のストーリーをもう少し深めたら、十分長編になったんじゃないかとか余計なことを思ってしまう。
・「この出口の無い、閉ざされた部屋で」
正直、オチは読めてたし、やり尽くされたネタなのに、ラストちょっとうるっときた。なんか悔しい。