なんか好きなものについて、ちょっと書いてみよう

本、マンガ、映画、舞台、美術館、旅行。なんでも好きです。好きだなーと思ったものについて、書いて留めようと思います。

「ポンピドゥー・センター傑作展」東京都美術館

20世紀美術を1916年から1977年までの60年間にわたり,一年一作家一作品のしばりの中で時系列順に展示していくちょっと変わった形式の展覧会。

一作家につき一作品のみの出展のため,ある意味では広く浅くに感じたが,これだけの作家に巡り合える展覧会はそうはないだろうから,ある意味では非常に奥の深い展覧会なのだろう。

 

正直に言っていわゆる20世紀美術は苦手だ。

解釈するものではないと言われるが,これに何の価値を見出せばいいのだろう?と悩んでしまう。説明がうまくできないんだけど,「その中に物語を感じる絵」が俺は好き。物語といってもギリシャ神話とかのストーリーだけでなくて,人の感情の機微とか人と人との繋がりとか。風景画にだって何かの始まりを感じる瞬間がある。

そういう意味で,20世紀美術って物語を感じにくいんだよね。(もちろん例外的な作家はいるけど。)

おしゃれだなーとかなんかすごいなーって思うことがあってもそこから関心が向かない。

そんな感じだったので,膨大な作品横の説明も脳みそをすり抜けて残らず……。

 

でも,見れてよかったなーて思う作品もいくつかあるのでメモを残す。

・「自転車の車輪」マルセル・デュシャン

「泉」で有名なデュシャンの初期の作品のレプリカ版。回してーってなる。自転車の車輪のフレームって美しいよね。わかるわかる。

・「エッフェル塔」ロベール・ドローネー

あたたかな色彩で描かれたエッフェル塔がきれい。エッフェル塔幾何学的な模様がきれいだよね。

・「サン=ラザール駅裏」アンリ・カルティエブレッソン

水たまりに着水する寸前の男性をとらえた写真。まるで,映画のポスターやCDのジャケットのよう。

・「ミューズ」パブロ・ピカソ

ピカソの絵はやっぱり引き付けられるなーと思う。ネームバリューのせいなのか,なんなのかは正直謎。でも絵を描く女性が何を考えているのか,目は悲しんでいるようにも見えるが,口元は俺には微笑んでいるようにも見える。向き合っているフレームは鏡なのかなんなのか。いろいろ考えてしまった。

・「イル=ド=フランス」マリー・ローランサン

マリー・ローランサンの書く女性は特徴的でシンプルなようだが,それぞれがどんなキャラクターなのか考える余地がある。姉妹なのか友人なのか。無知な自分としてはそういうのを想像するのが楽しい。こういうのが自分にとって「物語を感じる絵」。

・「マダム・ピカビア」エロ

こういうの好き(笑)そうとしか言いようがないかな。

 

『君の名を。』新海誠

新海誠作品,初めて見たー。

元々評価が非常に高かったので,期待しまくって映画館へ。

結果,本当にいいなーと思うところとちょっとなーと思うところがあった。

 

※ネタバレ注意

【いいなーと思うところ】

シンプルにストーリーの面白さ,映像のきれいさ,音楽とのマッチ具合,そして声優たちの演技のうまさ。

序盤はまあよくある体の交換ものでは当たり前の面白さ,コミカルさがでているだけで,まあ面白いんだけど,別に目新しさはないなーって思いながら見ていた。

がぜん面白くなったのは中盤以降。どうしたら,三葉を救えるかに話が移ってからは本当に面白かった。「境界を超える」アリュージョンとしか思えない電車のドアや引き戸の描写が繰り返されるのはなんでだろ?って思っていたら,クライマックスで境界を超えることの伏線だったのね。

音楽と映像のマッチはすごいねー。何度でも見たい。

あと,演技についてはパンフレットを見てすごさに気づいたんだけど,入れ替わりがあった時も主役二人の雰囲気に全然違和感がないんだよね。起きた瞬間はどっちなのかちょっとわからなくって,でも見てればすぐ分かって。クライマックスでも二人の話し方が本当に自然で,へたくそだとギャグにより過ぎてしまいかねない設定が絶妙のバランスでなりたっていた。素晴らしい。

【ちょっとなーと思うところ】

 主人公2人の成長があんまり描かれていないところ。これに尽きる。

自分の町から飛び出したいと思っていた三葉が町のために必死になって,避けてきた父親に立ち向かうところは成長なのかもしれない。でも,それならそれできちんと書いてほしかった。事件の後の描写が非常に少ないからよくわからないけど,最低でも七年(三葉の視点でね)経っていて,その間ずっと意味の分からない喪失感に悩んでいたんだとしたら,普通に心配になるわ。

瀧のほうはそもそも成長しそうな要素がなかったっちゃなかったけど,就活生としての描かれ方を見る限り,彼も喪失感をずっと抱えてきたようで。なんつーか本当不憫。

なんのために,再開までの時間をそんなに空けたんだよ…、って思ってしまう。

多分、ラストあたりの瀧がなんとなく頼りない感じで描かれているのが不満なんだと思う。ちょくちょく出てくる三葉も下を向いてることが多いし。自分たちの身に何が起こったかわからないまま漠然と時が過ぎていって、お互い巡り会えなければ大人にもなれなかったであろう描かれ方をしているのがちょっとなーと思う。

人と人のつながりは本当に尊いと思うけど,それがないと不安定であるのは危険なことだとも思ってしまうんだよね。

多分これが瀧が大学生くらいで、大学生活を謳歌しつつも、何か足りないと思っていたら、三葉に会えたとかだったら、自分としてはすっきり終えられたのかなと思う。

そんな訳で締めくくりはあまり好きになれず。

でもいい映画だとは思うよー。本当に。

「ピーターラビット展」bunkamura

ピーターラビットシリーズの作品から、
たくさんの原画を見せてくれる展覧会。ピーターラビットが好きなら行って損はない。

まわりながら、のんびりピーターラビットについて考える。
ピーターラビットのすごさを理解するキーワードは3つ。
マザーグース湖水地方の自然、博物学の知識。
真面目にピーターラビットについて学んだわけじゃないけども、なんとなく思ったことを書いておく。

マザーグース
そもそもピーターラビットのモデルになったウサギの名前はピーターパイパー。これはナーサリーライム(マザーグース)の早口言葉ででてくる人の名前だ。
他にも英語を見てみると、韻を踏んだ名前や文章がいっぱい。
ベンジャミンバニーのおはなしではハンプティダンプティが元になった文があるとのこと。
(あとで調べてみたけど、そんなに似ていると思えず…。どっか別のとこみてるのかしら。
Peter fell down head first; but it was of no consequence, as the bed below was newly raked and quite soft.)

湖水地方の自然
教科書にも載っている有名な話だが、ビアトリクス・ポター湖水地方保全に尽力したナチュラリスト
それだけに舞台には湖水地方の風景がよく描かれている。
三叉路の立て看板とか、ピーターとベンジャミンが超えた石壁とか。

博物学の知識
展覧会の表示によると、ポターはへびの解剖などもやるくらい博物学の勉強をきちんとしていたそう。
服を着て二足歩行する動物たちも骨格の構造まで理解した上で、その動物が立ち上がったらどうなるかを考えて描かれている。確かに動物たちはある程度リアルでありながら、違和感なく動いている。

植物も非常に丁寧に描き込まれている。

とくにポターはきのこを研究していたらしい。


【その他メモ】
文章はノエルへの絵手紙の段階でほぼ出来上がってたよう。
お母さんが注意しているシーンでピーターだけそっぽを向いているのも同じ。

 

『聲の形』大今良時

Kindleで1巻無料だったので,読み始めたらまんまと最終巻まで読んでしまった漫画第二弾!(笑)

つーか,俺この三連休で漫画代に7000円以上使ってるよ……。あかん……。

【概要】

転校してきた聴覚に障害をもつ女の子をいじめた少年の物語。

自分が人をいじめていたこと,そしてそれが原因で友達に裏切られいじめ返されたことによって他人と向き合うことができなくなった石田が高校3年生になり,かつていじめていた聴覚障害の少女,西宮に会いに行くところから本編が始まる。

 

【全体的な感想】

自分の罪の意識のせいで,自己承認がうまくいってないキャラクターってあまり読んだことがなくて,実に新鮮だった。しかも書き方が丁寧。周りのキャラクターたちも,いろいろ欠点がある分等身大で非常に良かった。ただ,真柴と川井だけは最後まで何考えているのかよくわからんかったわ…。逆に結弦は何を考えているのかがすごくわかりやすいキャラだったから登場すると安心できた。彼女にも謎はきちんと用意されていたけど。

 

【とりとめなくメモ】

一巻のいじめのシーンや,いじめっこだった石田がいじめ返されるシーンは読んでいて本当に胸が痛くなる。読んでいてしんどくなるのは,障害を持つ子どもがクラスに入ったときに周りの子どもたちがどう受け止めるのかの書かれ方がすごく説得力があるんだよね。五体不満足みたいに自然に受け入れられることもあるだろうけど,やはり負担に感じる子どもたちもいるんだろうなと思わせる描写がうまい。

小学校の担任の先生がクソだなーと思うんだけど,映画の撮影に小学校を使わせてほしいって頼みにいくシーンで西宮が「久々に来たかった」って手話で言っているのを読み取っているんだよね。いや,それでもクソだなーって思うけど彼は彼なりに思うことがあったんかな?

あくまで個人の趣味だけど,もっと幸せな後日談的なものが読みたかった。でもラストシーンで西宮が石田に手をひかれて踏み出す描写はすごいよかった。

四月は君の嘘』を読んだ直後のせいで少し比べてしまう。ジャンルが違うようだけど,どちらもボーイ・ミーツ・ガールだわ。

『四月』は読んでいる間が非常に幸せだけど,読後苦しくなる話。『聲の形』は読んでいる間は何度も苦しくなるけど,最後に希望を感じられる話。

『四月は親がひどいなーと思うけど,『聲の形』は親が本当にいい人で安心する。

 

【気に入ったセリフ・シーン】

西宮 俺とお前友達に…なれるか?(2巻)

 ⇒すべてが始まったシーン。1巻で西宮が伝えようとした手話をそのまま使ったことに2回目読んで気が付いた。

死ぬのやめるって言わなきゃコレ燃やすやよ!!(2巻)

 ⇒お母さんがほんっとーにいい人。名シーンでしょ。

どうやったら自分が昔より成長したって事を証明できるんだろう(5巻)

 ⇒この漫画で一番ささったセリフ。

こいつはみんなの気持ちを知りもせず 勝手にそれが一番いいって判断して飛び降りやがったんだ!!

 ⇒めちゃくちゃ暴力的なシーンだけど,言っていることは的を射ている。だから結弦も止められなかったのかな…。

もう意味ないってわかったから。これを見たら死にたくなくなると思って(6巻)

 ⇒結弦の考えがここでわかる。ここも名シーン。

『四月は君の嘘』新川直司

1巻がKindleで無料だったので、ついつい読んでしまったのが運の尽き。

気がつけば最終巻まで一気に読んでました。

 

以下ネタバレあり。

前半は母の虐待じみた教育と、母を失ったストレスで心に傷を負った公生がその傷を超えていく物語。
後半はその傷を乗り越える力をくれた人であり、公生の恋の相手であるかをりが病にどう向き合うかの物語。

もう、本当に腹の立つくらい王道というか、読み飽きたラブコメで、不治の病の少女の話。
(中学から高校にかけて不治の病ものを読みすぎた反動か、基本的には不治の病ものが嫌いである。嫌いというか、「そんなもん泣けるに決まってるだろーが。」と思ってちょっと冷めてしまう)
それでも、一気に読んだのは多分下の二つ要素が気になったから。①は読み終わった今も納得がいかない。②は純粋にいい点だと思う。

①納得のいかない点:主人公の成長について

公生の母親は完全に虐待をしており、それによって負った公生の精神的傷を彼がどう乗り越えるかが気になった。
これについては、正しいのか答えはでない。母親の教育は明らかに行きすぎていたし、それによって公生はかなり強いトラウマを持つことになった。
その結果があるだけで、もはや母親がどれだけ子どもを愛していようとアウトじゃないかと思ってしまう面もある。
ただ、難しいのは母親が故人であり、行き過ぎた教育が彼女自身が病に臥せった結果だとすれば多少、同情もしてしまう。
いやーでもどうしてもあの母親はダメだと思うなー。最終的に公生が乗り越えられたからいいのかもしれないけど、もっと母親が否定される書き方でも良かったんじゃない?とか思っちゃう。
つーか、どうしても納得いかないのが父親の存在の無さ。おかしいだろ。妻が病で死にそうで日常的に虐待をしており、その妻が死んだあと、明らかに息子の様子がおかしいのに特になにをするわけでもないって。放任主義の一言で終えていい問題じゃねーぞ。完全にネグレクト。公生の負の感情が一切父親に向かわないのはおかしいだろ。母親との決着はきちんとついていたと思うけど、(その決着についてモヤモヤしないわけではないけど)父親のこと一切描写しないのはいくらなんでも無理があると思ってしまった。

②すごくよかったと思う点:演奏シーンの見事さと魅力的なキャラクターたち
これは本当にいい点。

演奏を受けて人々がどう感じているのか、そして何よりも演者が成長していくのがよくわかり、かつ美しい描写である。
コンクールでの演奏が主人公たちの成長の「結果」ではなく「過程」であることが盛り上がりをうまく作っているのではないかと思う。

あとキャラクターは本当にみんな魅力的。主人公も周りの友人たちもライバルもみんないいやつで面白い。相座がいいやつだねー。大好きだよああいうキャラ。あとは女性キャラが全体的に強いなーっていう印象をうけた。あれだけ女キャラがいて全員がおとなしいキャラの女の子がいないのは珍しいなーと思う。

椿かわいいー。でもかをりもいいキャラだから本当にどっちにも幸せになって欲しかったー。

11巻で終わってくれてよかった。
短いからこそ、一切だれずに読みきって読んでよかったと思える。

「ルーブルNo.9」「ジブリの大博覧会」

ルーブルNo.9とジブリの大博覧会をハシゴしてきた。

ルーブルNo9は、作品を一切知らずにいくには正直言って微妙。
簡単なあらすじはあるものの、話はわからず……。いくつかのシーンだけをきりとっているので、最後どうなったかはわからずストレスがたまる……。いや、読めばいいんだけどさ……。岸辺露伴すら読んでなかったので買いました。展示の仕方は作品ごとに工夫がこらしてあって非常に面白かったけど、マンガはまず最初は本で読むべきかなーとも思ったり。
岸辺露伴が「瀕死の奴隷」のポーズを取っていたり、
(http://www.louvre.fr/jp/oeuvre-notices/《奴隷》)
露伴と奈々瀬のポージングが別の彫像だったりというのが知れたのもおもしろかったなあ。
それ以外だとエンキ・ビラルの「ルーヴルの亡霊たち」はそれ一つで物語が完結しているので無心で楽しめた。
説明が長すぎて読み解きに疲れたけど……。
寺田克也のイラストはやっぱりかっこいいよね。もっと見たい。

 

ジブリは単純にジブリの展覧会というよりも、プロデューサー鈴木敏夫の仕事を総括したような展覧会。
糸井重里さんと鈴木さんのファックスでのやりとりが面白かった。
もののけ姫のキャッチコピー「生きろ。」が生まれるまでにものすごく苦労されたよう。
没案に「ハッピー」とか「惚れたぞ。」とか「LIFE IS LIFE」とか結構大変そうなのがいっぱいあった笑
その大変さについて糸井さんが、「人を映画館に引っ張るのと、宮崎さんが思っているメッセージを込めるのの二つを同時にやるのが難しい」みたいなこと書いていて(うろ覚え)それも面白かった。
手書きの企画書などもあって興味深かった。当たり前だけど、作る前にこの映画で何をしたいのかはしっかり決まっているんだなぁ。
ラピュタでは冒険活劇、トトロでは子どもも大人も楽しめるもの、そしてもののけ姫では歴史の裏側の人間ともののけの戦い。

二つはしごすると情報量がすごくてかなり疲れた……。でも、楽しかった……。

『羊のうた』冬目景

久々に『羊のうた』を再読してみた。

吸血鬼、というか人の血を飲まないと理性を失う病に蝕まれたきょうだいを現代社会の中で描いた作品。

「人を傷つけてしまう弱さ」が本当に上手く描かれていると思う。

きょうだい2人やそれを取り巻く人々の関係性は細やかで非常に良い。

高校時代一気に読んだのを思い出した。

 

【ここからネタバレ】

 

 

ラストはいくらなんでもご都合主義すぎるかなー、と思った。

そりゃきょうだい2人ともが死ぬのを見たかったわけではないけどさ。

全部忘れて再スタートじゃ、一砂がいろんなことを乗り越えたことにはならないよね。(代わりに八重樫さんは本当に強くなったと思うけど)

あと、風見さんはドラマを動かすのに必要だったんだろうけど、いかんせん不自然に行動的すぎる気が……。

志砂のことを好きなだけであそこまでやるか?千砂をあんな風に追い詰めるか?

まあ、些細なことかもしれないけど気になった。