『エビータ』シアター・オーブ
エビータを見てきた。
アルゼンチンの大統領夫人の光と闇を描くミュージカル作品。
歴史的、社会的背景を一切知らずに見たのでついていくのに苦労したが、面白かった。
見終わった後に調べたことも踏まえてまとめる。
【エビータのキャラクターについて】
かなり二面性のあるキャラクターだと思う。
自分の魅力をうまく使い、田舎娘からラジオスター、そして大統領夫人へとのし上がっていく。
その生き様は清廉潔白とは言いがたく、劇中でも皮肉られながら描かれている。
また、基金を設立した後、集まったお金をスイス銀行に集めたり、目にとまった不幸な人を無作為に助けたりと一国の政治を担うには公正さに欠ける姿勢も示されていた。
一方で、労働者のために行動を起こしていることは真実のようで、下流階級の人々から慕われていたこともしっかり伝わってきた。
「下流階級の人々の希望になりたい」
「人々に自分を愛してほしい」
これらの言葉がエビータの嘘のない望みなのだろう。
私欲と野心のために大統領夫人に登りつめ、下流階級の人々に愛され、上流階級の人々からは忌み嫌われたエビータ。
聖女でも悪女でもなく、ある意味ふつうの弱い人間だったエビータ。
物語の冒頭で自ら語るようにordinaryでunimportant な面を持つ複雑なキャラクターが魅力的だった。
【チェのキャラクターについて】
見ている間はずっとチェ・ゲバラがなんでエビータを批判するのか謎だったが、後から調べたら少し腑に落ちた。
ゲバラはペロン政権下のアルゼンチンに住んでいたがらペロンの下で軍属になるのを嫌い国を出たらしい。
また、共産主義者のゲバラと、労働者のために働きはしたが規制を強め、共産主義を弾圧したペロンはそれぞれ正反対の方針で進んでいたようだ。
(この辺り全てウィキペディア情報なのでいつか調べる)
ならば、ゲバラがペロンやエビータのことを批判し、皮肉るのも頷ける。
このチェというキャラクターがいるおかげでエビータの功罪のうち、罪の部分が非常にわかりやすく、コミカルに表してくれている。
このエビータという作品はかなり複雑な政治劇のようで、名前を与えられているキャラクターは5人しかおらず、うち2人は物語の序盤で少ししかでてこないので、概ねエビータとペロンとチェの三人(重要なキャラクターとして大衆がいるが)で進んでいく。
ここで、実際の人物がエビータを批判するのではなく、時も空間も超えて動けるコロスとしてのチェがいるおかげで話は非常にわかりやすくなっている。