『蜜蜂と遠雷』恩田陸
(というか,まだとってなかったんだってびっくりしたけど)
と聞いて,どんな奇想天外な物語なのだろうと期待して読んでみたら,なんとド直球の青春音楽もので,これもまたびっくり。
いや,俺が『MAZE』とか『ロミオとロミオは永遠に』とか意味不明なものばっかり読んでるからそう思うだけであって,恩田陸ってよく考えたら青春もの得意な作家なのか?
群像劇のうまさはさすがだし,「突如現れる異質なものに人々がどう対応するのか」ってテーマはまさに恩田陸らしいが,もっと奇をてらったものを予想していただけに序盤はちょっと驚きながら読んでいた。
だけど,進むにつれて単純に話の面白さにひきつけられていくのを感じた。
最初に書いた通り群像劇なため,主要な登場人物が少なく見積もって5人もいるのだが,それぞれキャラクターが立っていて,「あれ?こいつ誰だっけ?」みたいな混乱が一切ない。
やや漫画っぽいキャラクター名も功を奏しているんだろうな。
キャラクターたちの感情描写もきめ細やかで,自分は特に高島明石と栄伝亜夜が好き。
明石の『春と修羅』の描写がすごく好きだったので作曲家の賞をとったところでは思わず眼がしらが熱くなった。
音楽の素養が全くないため,音楽の情景はピンとこないところもあったが,キャラクターや曲に合わせてあそこまで描写できるだけですごいと思う。
(読んでいる間,脳内は大体『4月は君の嘘』の絵で再生されていた(笑)奏だけは『ちはやふる』のかなちゃん)
実に面白かったのだけど,凡人にはわからない音楽の違いを言葉で語る小説ってとこが『羊と鋼の森』とかぶっていたため,ちょっと食傷気味。しばらく音楽小説避けたいかな……。