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なんか好きなものについて、ちょっと書いてみよう

本、マンガ、映画、舞台、美術館、旅行。なんでも好きです。好きだなーと思ったものについて、書いて留めようと思います。

『コンビニ人間』村田沙耶香

小説

面白い。

【解説】
他の人に共感するという当たり前の能力が欠如している女性が主人公。
死ぬことが怖い、友だちと一緒にいるのが楽しい、人に嫌われると悲しい。そんな当たり前の感情が生まれつき持てない女性、古倉恵子。
彼女は小学生の頃から周囲の人におかしいと思われ続け、家族からも「治って」欲しいと願われて生き続けてきた。
そんな願いもむなしく、その性質のまま他人に迷惑をかけないよう、かけられないように生きてきた古倉さんは大人になりコンビニで働きだす。
全てがマニュアルで決められ、ルールに基づいて物事が動くコンビニは古倉さんにとって安息の地であった。
そんな古倉さんの視点から、コンビニ店員たちや家族が描かれる現代小説。

【感想】
予想以上に面白かった。
共感能力のない人、(言葉が正しくないかもしれないが)サイコパスが犯罪者になる小説はいっぱいあって正直大嫌いです。人間には闇や危険思想があるなんて当たり前だし、ことさらにそれだけを強調して不安感を煽るようで好きになれない。
そんな中で、『コンビニ人間』はある種の精神障がい者が誰にも迷惑をかけず、社会の中にいて、その中からどのように社会を見ているのかを非常に上手く書いている。
主人公の古倉さんと対になる白羽さんという人も中々秀逸で、かなり極端だが今の社会の一面を正しく語っている。
社会が求めるものを意識しすぎて、劣等感でいっぱいの白羽さんと社会の求めるものをとんと理解できない古倉さん。
この二人のやりとりは決して愉快ではなく、白羽さんのキャラクターなんかはむしろ不愉快なのだが、どこか自分が感じていることに通じるところもあって読むのを止められなかった。
人が幸せと思うことをなぜ自分も幸せと思わなければならないのか。自分は自分らしく誰にも迷惑をかけずに生きていちゃいけないのか。
古倉さんほど極端ではないが、自分もそう感じることはある。
社会が求める人物像というものがあって、そこからはみ出している者は迫害か中傷をされる。
白羽さんほど破綻してないつもりだが、似たような理不尽を感じる自分が時々いる。
もちろん、コンビニの店長や妹のように他人を自分の理解しやすい姿に当てはめたがる自分もいる。

自分が社会に正しく属しているか、揺さぶられた気がした。


読み終わった直後はなんとなく物足りない気がしたが、たぶん古倉さんの価値観からもっといろんな社会を見たかっただけで、ラスト自体にはなんの文句もない。
読んでいて一切暖かい気持ちにも熱い気持ちにもならないのに、面白い小説は久しぶりに読んだ。