なんか好きなものについて、ちょっと書いてみよう

本、マンガ、映画、舞台、美術館、旅行。なんでも好きです。好きだなーと思ったものについて、書いて留めようと思います。

『at Home』本多孝好

歪だけど暖かな家族の話を集めた短編集。

「at Home」
犯罪者一家の話。こういう設定ありきの話は好きになれないことのほうが多いのだけど、これはサクッと読めることもあって好き。
クライマックスの急展開には、ちょっとついていけないところもあったけど、ラストは好き。もう少し明日香との関係性をちゃんと書いて欲しくはあった。

「日曜日のヤドカリ」
これが一番好きかもしれない。
妻の連れ子と父親の話。
敬語で話しながらも、きちんと関係性ができている2人のやり取りがよい。

リバイバル
無気力に搾取される中年男性とヤクザのいざこざに巻き込まれた外国人女性の話。
主人公のように、必要のない不利益を甘んじて受ける気持ち、ちょっとわかる。
よく考えればその状況を抜け出すことはできるのに、それすらも放棄したくなる無気力状態。
それはあくまで甘えでしかないことを、忘れないようにしようと思った。

「共犯者たち」
この短編集では珍しく、そしてある意味ラストにふさわしい、血の繋がった家族の話。
家族みんな、どこかが欠けていて、それは決して責められるべきほどのものではない。
そんな家族のちょっとした、でも完全ではない再生の話。

 

イディナ・メンゼル来日コンサート

ミュージカルナンバー以外の曲がわからず悲しいやら、申し訳ないやらだけど、とにかくよかった。

一番ダントツで感動したのはRENTのFinaleなどで流れるNo day but today。
MCでオリジナルキャストであるイディナの口から、ラーソンの突然の死について、そして今生きている人へのメッセージを語られた上で聞くRENTの曲は何よりも胸を揺さぶった。

次がWickedのDefying Gravity。
やっぱり名曲。
最初は別の曲(?)から始まったけど、Defying gravity につながった瞬間声が出た。
舞台の中心に立ち、これからの自由に向けて高らかに歌うイディナは最高にカッコよかった。

そして、Let it go.
日本語でサビを歌ってくれただけでなく、子供たちを舞台に上げて一緒に歌うパフォーマンスまでやってくれて、優しいねぇ。
そして、仕込みじゃないと思うんだけど、みんな英語で歌えていてすごい!
本当に何度も聞いているんだろうなー。
生で聞くLet it go.は格別でした。

あと、マイクを通さずに歌っていたFor good。
流石の声量だわ。
ウィキッドもっかい見たくなってきた。

生で見れて歌が聴けたことは一生の思い出だろうな。
他の曲も気になるので、CD借りて聞こうー。

『動物のお医者さん』佐々木倫子

Kindleで安かったので、全巻購入。

トーリー上の時間は進んでいくのだが、なんの山場もなくただただ獣医学部の学生たちの日常を描くコメディ漫画。
チョビが可愛くて、菱沼さんや漆原教授のキャラクターが愉快。
ともかく、チョビがかわいい。
そんな漫画。

『3月のライオン』大友啓史

原作の漫画が大好きなので、見に行った。
正直に言って、後編見るまでは何とも評価できないなー。
元々原作もそうだからしょうがないのだけど、家族の話と零自身の話、二階堂との話が混じり合って、最終的なポイントがよくわからなくなってる。
ラストシーン、渋すぎるでしょ。
好きだけどさ。
原作でもなんとなく中途半端になっている香子との関係に後編では決着がつくのだろうか?
予告の段階で原作にはないシーンがあったので期待はできそう。
あと、コメディパートが減ってヒューマンドラマの比重が増えたのは映画としては正しいんだろうけど、原作ファンとしてはちょっと悲しい。

川本家でのかけあいとか、学校でのほのぼの話とかがなくて…。

役者の演技は良い。
桐山くんの神木隆之介は流石。
なんの違和感もなく、あのややこしい役をやっているのはすごいと思う。
誰よりも佐々木蔵之介の島田さんが漫画のまんまで非常に良い。
ただ、原作でのせきばらいでの声かけが謎のテレパシーに変わっていたのは残念。
二階堂は原作とは少しキャラが変わっていて残念。
年相応のキャラクターとして、映画のほうが自然なのかもしれないけど原作の二階堂が好きなので個人的にはマイナスポイント。
それでも、「一編の冒険小説のようだった」のモノローグは大好きなので残っていてよかった。
高橋一生の先生もいい味出してるけど、漫画とはちょっとキャラが違うかな。
まあ、そもそも学校での生活にあまり焦点があたっていないからそれはしょうがないのかな。
地味に子供時代の香子をやっていた子役の子が演技うまかったと思うんだけど、どうだろう?

「ミュシャ展」国立新美術館

美しい女性の綺麗なポスターで有名なミュシャが晩年を捧げて描いたスラヴ叙事詩が公開されたので早速見に行く。
圧巻だった。
特に出来が良いとされる最初の3枚は見ていると、想像力を揺さぶられて鳥肌がたった。
自分が好きな絵ってのは見ていて「物語を感じる絵」なんだけど、スラヴ叙事詩は強くそれを感じた。
空中に描かれた神や王たちからだけでなく、地上の人々一人一人にドラマがあることを予感させる絵だった。
市井の人々がしっかり書き込まれ、主題となる有名な人物の他に、象徴的な市民も強調して描かれているためかな。
また、女性や子供、老人も書き込まれ、一人一人、書き分けられているのも特徴なんだろうな。
2番の「ルヤーナ島でのスヴァントヴィート祭」の踊り子が特に好き。

最初の3枚以外で好きなやつは以下。
7番の「クロムニェジーシュのヤン・ミリーチ」
苦しみを超える女性のドラマに惹かれるのかな。地上にいる2人の女性が目を引く。
12番の「ヴォドニャヌイ近郊のベトル・ヘルチツキー」
復讐に燃える男の手を受け止めるヘルチツキーの姿が印象的。
13番の「フス派の王、ポジェブラディとクンシュタートのイジー」
その時歴史が動いた」的な雰囲気が好き笑
14番「ニコラ・シュビッチ・ズリンスキーによるシゲットの対トルコ防衛」
珍しく戦闘の場面がそのまま描かれる。
ただし、兵隊だけでなく女や老人まで描かれているのが目につく。激しいたたかいを想起させる赤が印象的。
20番「スラヴ民族の賛歌」
メッセージ性を強く感じる象徴的な作品。今までの復習のように神話の時代から近世まで描かれている。

基本的に自分は「自分たちの民族アイデンティティを残すために創造的活動をする」っていう事自体が好き。他はグリム兄弟くらいしか知らないけど。
自分たちの精神を保つために芸術が持てる役割の一つだと思う。
もちろんナショナリズムポピュリズムにならないよう注意はいるのだろうけど。

後半のポスターなどは以前見たミュシャ展と同じものも多かった。
ハムレットがあったのが、小さな収穫(笑)

『ミス・サイゴン:25周年記念公演inロンドン』

25周年記念公演のライブ・ビューイング。

見に行って本当に良かった。歌にも演技にも感動した。一方で前に見たときには受け止めきれなかったこの作品の社会的意味も少し考えてしまった。

 

【感想】
キム役のエバ・ノブルザダの演技と歌が素晴らしくて何度も泣きそうになってしまった。無垢な少女だった序盤から、母親になった強さまで細かな表情まで見れるのがライブ・ビューイングの良さだね。
最初に東宝で見たときは全然ストーリーというか、端の役のことを理解できてなかったんだなと今更ながら思う。
ジジやエレンのこととかあまり印象に残ってなかったもんな……。
そういう意味で映画館で見ると焦点を合わせやすいから、舞台だけでなくこういうので見るのもあり。
あとなジジ役のレイシェル・アン・ゴーとエンジニア役のジョン・ジョン・ブリオネスの2人が魅力的なパフォーマーで印象に残った。
あ、個人的には好きじゃなかったのは字幕。日本語版の歌詞をそのまま字幕にしているから、日本版ファンの人はすっと入りやすく嬉しいのだろうけど、英語を聞き取り理解しようとすると逆に字幕の情報量が少なすぎて混乱する。
これは好みなのかもしれないけど、俺は英語の歌に合わせた字幕をきちんとつけてほしい。

 

スペシャル・フィナーレ】
スペシャルフィナーレも、サロンガの登場からゴーとのデュエット、新旧キムとクリスのカルテット、ジョナサン・プライスのアメリカンドリームと盛りだくさんで映画館というのを忘れて声をあげそうになってしまった。
サロンガは非常にチャーミング。プライスもユーモアを交えてアメリカンドリームを歌って、所々で今回のエンジニアであるブリオネスを絡んでるのがかわいい。なんなんだあの色気たっぷりのおじいちゃんww
新キャストからしたら伝説のような彼らと同じステージで歌えることはどれほどの感動だったのだろう。
こっちまで嬉しくなっちゃったよ。
ただ、もうちょっとノブルザダもフィーチャーして欲しかった笑

完全にサロンガのターンだったもんね。

 

ミス・サイゴンについて思うこと】
結局この作品って、クリス(もう少し広くとるとアメリカ男性)を許せるかどうかで感想が変わってしまう。
素直に作品だけを受け止めるとキムが不憫すぎて救いがなさすぎる。クリスが非道って感想になっちゃう。
けど、ベトナム戦争を終えたアメリカ兵は国内でも責められ、戦争のトラウマでPTSDになった兵たちも多いと聞く。その辺りのクリスの苦しみが薄くしか描かれていないから、そこを無視されがち。そういう意味でクリスに寄り添える考え方もあると思う。
また、そこを踏まえた上でクリスやアメリカを許せないという感想もありだと思う。やっぱり、ブイドイの扱いは俺も疑問が残るし、白人に都合のよい描かれ方だと思うこともある。
結局クリス寄りの見方をするのは、アメリカや男性よりの見方にとらわれているからではないかという気もしてしまう。
モヤモヤする。

『ロミオとジュリエット』ナショナル・シアター・ライブ

ケネス・ブラナー演出、リリー・ジェームズ主演ということで期待して劇場へ。
なんとなく正統派っぽい演出だと予想して行ったが、完全に裏切られた。
若者の性急さとか衝動の激しさとかに焦点が当たっていて、全シーン大忙し。
なんつーか、ロマンティックさをかなーり排除した感じのロミオとジュリエットだった。

<こっから演出関係のネタバレ>
まさかのバルコニーシーンでジュリエットが飲酒(笑)しかもかなり豪快に。
確かに「あんなセリフよくシラフで言えるなー」って笑っていたけど、まさかそんな解釈があるとはww
そんなわけで伝統的な清廉潔白なジュリエットでは全然ない最近の若者のようなジュリエットをリリー・ジェームズが超エネルギッシュに演じています。

テンポもめちゃくちゃ早くて、バルコニーも、別れのシーンも、死のシーンも、「あれ?このシーンこんなに早かったっけ?」って思うレベルでガンガン進んでいく。
特にラストシーンはなんの余韻もタメもなくジュリエットが胸を刺しちゃうので、あっという間すぎてあっけにとられるレベル。
あれはなんの意図があったんだろうなー。

あ、あとマキューシオにデレク・ジャコビという大ベテランの名優を持ってきたもんだから、ロミオ、ベンボーリオとマキューシオの年齢差がすごいことに。
マキューシオは立ち位置の謎な、粋で面白いおっさんになってしまったwww

冒頭で若者の性急さって書いたけど、この芝居だと性急なのは若者だけじゃないんだよね。
キャピュレットの親父はかなりの激情家だし、マキューシオは若者じゃなくなっちゃったし、ローレンスも(まあ、こいつはいつもだけど)どこか抜けていてあわてんぼうだし。
これがブラナーのイメージするラテンのテンポなのかしら。

いやー、ある意味面白かったけど、ちょっと予想外。