なんか好きなものについて、ちょっと書いてみよう

本、マンガ、映画、舞台、美術館、旅行。なんでも好きです。好きだなーと思ったものについて、書いて留めようと思います。

『ミス・サイゴン:25周年記念公演inロンドン』

25周年記念公演のライブ・ビューイング。

見に行って本当に良かった。歌にも演技にも感動した。一方で前に見たときには受け止めきれなかったこの作品の社会的意味も少し考えてしまった。

 

【感想】
キム役のエバ・ノブルザダの演技と歌が素晴らしくて何度も泣きそうになってしまった。無垢な少女だった序盤から、母親になった強さまで細かな表情まで見れるのがライブ・ビューイングの良さだね。
最初に東宝で見たときは全然ストーリーというか、端の役のことを理解できてなかったんだなと今更ながら思う。
ジジやエレンのこととかあまり印象に残ってなかったもんな……。
そういう意味で映画館で見ると焦点を合わせやすいから、舞台だけでなくこういうので見るのもあり。
あとなジジ役のレイシェル・アン・ゴーとエンジニア役のジョン・ジョン・ブリオネスの2人が魅力的なパフォーマーで印象に残った。
あ、個人的には好きじゃなかったのは字幕。日本語版の歌詞をそのまま字幕にしているから、日本版ファンの人はすっと入りやすく嬉しいのだろうけど、英語を聞き取り理解しようとすると逆に字幕の情報量が少なすぎて混乱する。
これは好みなのかもしれないけど、俺は英語の歌に合わせた字幕をきちんとつけてほしい。

 

スペシャル・フィナーレ】
スペシャルフィナーレも、サロンガの登場からゴーとのデュエット、新旧キムとクリスのカルテット、ジョナサン・プライスのアメリカンドリームと盛りだくさんで映画館というのを忘れて声をあげそうになってしまった。
サロンガは非常にチャーミング。プライスもユーモアを交えてアメリカンドリームを歌って、所々で今回のエンジニアであるブリオネスを絡んでるのがかわいい。なんなんだあの色気たっぷりのおじいちゃんww
新キャストからしたら伝説のような彼らと同じステージで歌えることはどれほどの感動だったのだろう。
こっちまで嬉しくなっちゃったよ。
ただ、もうちょっとノブルザダもフィーチャーして欲しかった笑

完全にサロンガのターンだったもんね。

 

ミス・サイゴンについて思うこと】
結局この作品って、クリス(もう少し広くとるとアメリカ男性)を許せるかどうかで感想が変わってしまう。
素直に作品だけを受け止めるとキムが不憫すぎて救いがなさすぎる。クリスが非道って感想になっちゃう。
けど、ベトナム戦争を終えたアメリカ兵は国内でも責められ、戦争のトラウマでPTSDになった兵たちも多いと聞く。その辺りのクリスの苦しみが薄くしか描かれていないから、そこを無視されがち。そういう意味でクリスに寄り添える考え方もあると思う。
また、そこを踏まえた上でクリスやアメリカを許せないという感想もありだと思う。やっぱり、ブイドイの扱いは俺も疑問が残るし、白人に都合のよい描かれ方だと思うこともある。
結局クリス寄りの見方をするのは、アメリカや男性よりの見方にとらわれているからではないかという気もしてしまう。
モヤモヤする。

『ロミオとジュリエット』ナショナル・シアター・ライブ

ケネス・ブラナー演出、リリー・ジェームズ主演ということで期待して劇場へ。
なんとなく正統派っぽい演出だと予想して行ったが、完全に裏切られた。
若者の性急さとか衝動の激しさとかに焦点が当たっていて、全シーン大忙し。
なんつーか、ロマンティックさをかなーり排除した感じのロミオとジュリエットだった。

<こっから演出関係のネタバレ>
まさかのバルコニーシーンでジュリエットが飲酒(笑)しかもかなり豪快に。
確かに「あんなセリフよくシラフで言えるなー」って笑っていたけど、まさかそんな解釈があるとはww
そんなわけで伝統的な清廉潔白なジュリエットでは全然ない最近の若者のようなジュリエットをリリー・ジェームズが超エネルギッシュに演じています。

テンポもめちゃくちゃ早くて、バルコニーも、別れのシーンも、死のシーンも、「あれ?このシーンこんなに早かったっけ?」って思うレベルでガンガン進んでいく。
特にラストシーンはなんの余韻もタメもなくジュリエットが胸を刺しちゃうので、あっという間すぎてあっけにとられるレベル。
あれはなんの意図があったんだろうなー。

あ、あとマキューシオにデレク・ジャコビという大ベテランの名優を持ってきたもんだから、ロミオ、ベンボーリオとマキューシオの年齢差がすごいことに。
マキューシオは立ち位置の謎な、粋で面白いおっさんになってしまったwww

冒頭で若者の性急さって書いたけど、この芝居だと性急なのは若者だけじゃないんだよね。
キャピュレットの親父はかなりの激情家だし、マキューシオは若者じゃなくなっちゃったし、ローレンスも(まあ、こいつはいつもだけど)どこか抜けていてあわてんぼうだし。
これがブラナーのイメージするラテンのテンポなのかしら。

いやー、ある意味面白かったけど、ちょっと予想外。

『ザ・オーディエンス』ナショナル・シアター・ライブ

ヘレン・ミレンが20代から80代までのエリザベス二世を1人で演じきる圧巻の舞台。
毎週火曜日に行われる英国首相と女王の20分間の謁見だけでほとんどの芝居が構成され、でてくるキャラクターたちもストーリーもバラバラなのに一貫して面白いなんとも不思議な舞台だった。

チャーチルサッチャー、キャメロン、ブレアくらいは名前聞いただけでわかるが、他の英国首相が全然わからず、出てくる社会問題もスエズ危機なんか名前くらいしかわからない。
いや、もう少し社会情勢とか歴史とかに興味を持っておくべきだった。

そんな感じなので、バックグラウンドは全然わからないはずなのに本当に面白いから不思議。観客の笑い声まで録画されているせいでついつい何度も声をだして笑ってしまった。
女王のウィットにとんだ話、首相たちとの微妙な間柄が面白い。
また、時々出てくるエリザベス女王の子ども時代、(もしくは内面)の役者も本当に演技がうまくてびっくりした。

一点残念なのはカメラワークの関係かインターミッションで語られていた早着替えが全然感じられなかったこと。
じっくり見せると秘密がバレるからやりたくなかったのかなー?
でも、20代の女王への変化とか見たかったよー。
一つ一つのシーンを把握するのでいっぱいいっぱいで、それでも十分楽しめたけど、バックグラウンドも把握した上でシーン同士の関係がわかるようになったらもっと面白いんだろうな……。
勉強しよう。

『ラ・ラ・ランド』デミアン・チャゼル

ミュージカルが好きなら絶対に見なければならないと思い、変にネタバレされないよう公開3日目に見てきたー。

いやー、すっごい面白かったし、たのしかった。
そしてエマ・ストーンの演技がすごい。
最後のオーディションのシーンでのエマ・ストーンの表情がすごすぎて、字幕見なきゃいけない自分の英語力に心底悔しくなった。
ラスト以外でも、やたらとアップが多いんだよね、この映画。
それに耐えうるだけの演技をするエマはアカデミー賞とって当たり前だわ。

話は古き良きミュージカルをイメージして作られて、面白いんだけどよくある(というか具体的に言えないけどなんかどっかにありそうな)話。
夢を持つ男女が出会い、最初はあんたなんてとか言ってたけど、結局付き合うことになり、ケンカして、仲直りして、でも結局別れる話。
いやー、書き連ねると本当に面白そうじゃないな、これ(笑)
でも、曲と演出、演技がいいから飽きずにずーっと見ちゃうし。なんならもっかい見たい!ってなる。
曲も結局サウンドトラック落としてずーっと聴いてる。
ラストはハッピーじゃないんだけど、ハッピーな気分になれる映画。
古い映画みよー。

『竜の学校は山の上』九井諒子

ダンジョン飯』の作者の短編集。

ファンタジーの中の日常か、日常の中のファンタジーか。

進学天使は読み終わったあと、モヤモヤするけど、ちょっと考えさせるようなところがいい作品なのだろう。

現代神話が好きだな。

『ほしのこえ』新海誠

高校時代に雑誌か何かの紹介ページで見て、ずっと見たいと思っていたのに見ないままになってしまっていた。『君の名は。』をきっかけに他の新海誠作品も見てみるかってことでとりあえずこいつから。

新海さんが自分の妄想とフェチズムをほとんど1人で形にしたと考えるとすごいし尊敬できるけど、それだけっちゃそれだけの作品。

携帯の電波が届かなくなっていく切ないストーリーって前情報が入っちゃってるともはや何も楽しめないね。

とりあえず新海監督は足フェチなんだってのはよくわかった。

もう何作品か見てみようと思う。

『蜜蜂と遠雷』恩田陸

恩田陸がついに直木賞をとった!!

(というか,まだとってなかったんだってびっくりしたけど)

と聞いて,どんな奇想天外な物語なのだろうと期待して読んでみたら,なんとド直球の青春音楽もので,これもまたびっくり。

いや,俺が『MAZE』とか『ロミオとロミオは永遠に』とか意味不明なものばっかり読んでるからそう思うだけであって,恩田陸ってよく考えたら青春もの得意な作家なのか?

群像劇のうまさはさすがだし,「突如現れる異質なものに人々がどう対応するのか」ってテーマはまさに恩田陸らしいが,もっと奇をてらったものを予想していただけに序盤はちょっと驚きながら読んでいた。

だけど,進むにつれて単純に話の面白さにひきつけられていくのを感じた。

最初に書いた通り群像劇なため,主要な登場人物が少なく見積もって5人もいるのだが,それぞれキャラクターが立っていて,「あれ?こいつ誰だっけ?」みたいな混乱が一切ない。

やや漫画っぽいキャラクター名も功を奏しているんだろうな。

キャラクターたちの感情描写もきめ細やかで,自分は特に高島明石と栄伝亜夜が好き。

明石の『春と修羅』の描写がすごく好きだったので作曲家の賞をとったところでは思わず眼がしらが熱くなった。

音楽の素養が全くないため,音楽の情景はピンとこないところもあったが,キャラクターや曲に合わせてあそこまで描写できるだけですごいと思う。

(読んでいる間,脳内は大体『4月は君の嘘』の絵で再生されていた(笑)奏だけは『ちはやふる』のかなちゃん)

実に面白かったのだけど,凡人にはわからない音楽の違いを言葉で語る小説ってとこが『羊と鋼の森』とかぶっていたため,ちょっと食傷気味。しばらく音楽小説避けたいかな……。