なんか好きなものについて、ちょっと書いてみよう

本、マンガ、映画、舞台、美術館、旅行。なんでも好きです。好きだなーと思ったものについて、書いて留めようと思います。

『蜜蜂と遠雷』恩田陸

恩田陸がついに直木賞をとった!!

(というか,まだとってなかったんだってびっくりしたけど)

と聞いて,どんな奇想天外な物語なのだろうと期待して読んでみたら,なんとド直球の青春音楽もので,これもまたびっくり。

いや,俺が『MAZE』とか『ロミオとロミオは永遠に』とか意味不明なものばっかり読んでるからそう思うだけであって,恩田陸ってよく考えたら青春もの得意な作家なのか?

群像劇のうまさはさすがだし,「突如現れる異質なものに人々がどう対応するのか」ってテーマはまさに恩田陸らしいが,もっと奇をてらったものを予想していただけに序盤はちょっと驚きながら読んでいた。

だけど,進むにつれて単純に話の面白さにひきつけられていくのを感じた。

最初に書いた通り群像劇なため,主要な登場人物が少なく見積もって5人もいるのだが,それぞれキャラクターが立っていて,「あれ?こいつ誰だっけ?」みたいな混乱が一切ない。

やや漫画っぽいキャラクター名も功を奏しているんだろうな。

キャラクターたちの感情描写もきめ細やかで,自分は特に高島明石と栄伝亜夜が好き。

明石の『春と修羅』の描写がすごく好きだったので作曲家の賞をとったところでは思わず眼がしらが熱くなった。

音楽の素養が全くないため,音楽の情景はピンとこないところもあったが,キャラクターや曲に合わせてあそこまで描写できるだけですごいと思う。

(読んでいる間,脳内は大体『4月は君の嘘』の絵で再生されていた(笑)奏だけは『ちはやふる』のかなちゃん)

実に面白かったのだけど,凡人にはわからない音楽の違いを言葉で語る小説ってとこが『羊と鋼の森』とかぶっていたため,ちょっと食傷気味。しばらく音楽小説避けたいかな……。

『足跡姫』NODA・MAP

二度目のNODA MAP。当日券に挑戦して、なんとか一階の席をゲット。
正直な感想は歌舞伎をもっと好きだったら、もっと楽しめたのかなーって感じ。
歌舞伎が連綿と続いていることや、反骨精神についてのメッセージなんだというのはわかったけど、あーそうなんだーってくらいで済んでしまった。
疲れのせいなのかもしれないけどセリフが捉えきれずに疲れてしまった。特に野田秀樹……。
ストーリーが収束していくのも、逆鱗ほどの衝撃はなく、なんだかふんわりとしていってしまった。
いや、ごめんなさい。正直ラスト付近やや睡魔にやられた……。
(野田ファンからしたら逆鱗が特殊なのかもしれないけど)

もう少し歌舞伎や中村勘三郎について詳しければもっと楽しめたかな。
そして、他の小ネタも人を選ぶのが多くなかった?
フレデリックとか、絶対わかってないお客さんいたし、俺もわからないのあったし。

『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』デビット・イェイツ

ハリウッドの文脈に正しく乗せたハリー・ポッター世界。
つまらなくはないけど、感動するほど面白いかと言えば微妙。

どの辺が微妙かまとめてみた。
【プロットが微妙】
町を巻き込む大きな事件、主人公はちょっとしたミスと勘違いで権力に追われる。結局敵の黒幕は権力のナンバーツーくらいのポジションで、最終的に解決した主人公は無罪放免。
なんつーか、どこか他の映画で見たようなテンプレートをずっと辿らされた気分。
せっかく魔法生物っていう面白いテーマがあるんだから、もっといろんなところに行って、冒険してくれればいいのに。
どの辺か「魔法使いの旅」なんだよ。
(これは邦訳が悪いだけだけど)
ベタな話は嫌いじゃないけど、これは何から何まで話が読めすぎた。

あと、利用されてた子どもに救いなさすぎない?
集中砲火で普通に消えちゃうってどうなの?
呪文大好きなので、ラストの戦いでほぼ呪文がなかったのも残念。
エクスペリアームズとか、ステューピファイとかもっと聞きたかった。

【キャラクターが微妙】
ジェイコブというマグル(アメリカだとノー・マジというらしい)のキャラクターが非常にいい味を出してるのだが、彼の寛容さ異常じゃない?
意味のわからない魔法生物に襲われて毒までくらったのに、美人に介抱されて面白そうな魔法生物見せられただけで、あっさり友達になってんじゃねーよ。
もうちょっとなんかあるだろ。
その辺ちゃんとしたほうがラストがもっと良かったのでは……。
キャラは良かったのだけど、ニュートとの関係性の積み上げをもう少し丁寧にしてほしかった…。

 

なんか勢いで気に食わなかったとこばかり書いたけど、トランクの中にたくさんの魔法生物がいる世界観とか、色んな魔法生物を捕まえようとするところとかは普通に面白かった。
むしろそれメインでやってほしかったよ。
あと、どもりがちなニュートが魔法生物のことになるとちょっと饒舌になるとことか好き。

そんな感じで(過去のハリー・ポッター作品と比べて)一つの映画としてよくまとまってて良いけれど、突出していいところがあるわけでもないそんな映画でした。

『天然素材でいこう』麻生みこと

最近、恥ずかしながら、麻生みことの描く女キャラがお気に入り(笑)
今回は大分初期の作品の上、 読み切りから始まったらしいから、キャラがブレブレで、描きわけも微妙で絵を見ただけでは誰が誰だか分からん、というなんとも荒削りな作品。
でも、学校ものって好きだからついつい読んじゃうんだよね。
個人的には北大路さんが好き。
頭良くて、頼りになって、自立してるのに一途ってヤバい。
主人公の二美も嫌いじゃないけど、なんかキャラがブレてる気がして不思議な感じ。

ラストは納得いかねーなー。
「結局千津かよ‼︎‼︎」って気がしちゃうし、最後まで気持ち良く幸せなみんなが見たかったし。
高雄氏に対する「何を今更感」が止まらない。
あ、北大路さんが報われたのは心底うれしいっす(笑)
いや、でも今後も苦労するんだろうな〜。

『コンビニ人間』村田沙耶香

面白い。

【解説】
他の人に共感するという当たり前の能力が欠如している女性が主人公。
死ぬことが怖い、友だちと一緒にいるのが楽しい、人に嫌われると悲しい。そんな当たり前の感情が生まれつき持てない女性、古倉恵子。
彼女は小学生の頃から周囲の人におかしいと思われ続け、家族からも「治って」欲しいと願われて生き続けてきた。
そんな願いもむなしく、その性質のまま他人に迷惑をかけないよう、かけられないように生きてきた古倉さんは大人になりコンビニで働きだす。
全てがマニュアルで決められ、ルールに基づいて物事が動くコンビニは古倉さんにとって安息の地であった。
そんな古倉さんの視点から、コンビニ店員たちや家族が描かれる現代小説。

【感想】
予想以上に面白かった。
共感能力のない人、(言葉が正しくないかもしれないが)サイコパスが犯罪者になる小説はいっぱいあって正直大嫌いです。人間には闇や危険思想があるなんて当たり前だし、ことさらにそれだけを強調して不安感を煽るようで好きになれない。
そんな中で、『コンビニ人間』はある種の精神障がい者が誰にも迷惑をかけず、社会の中にいて、その中からどのように社会を見ているのかを非常に上手く書いている。
主人公の古倉さんと対になる白羽さんという人も中々秀逸で、かなり極端だが今の社会の一面を正しく語っている。
社会が求めるものを意識しすぎて、劣等感でいっぱいの白羽さんと社会の求めるものをとんと理解できない古倉さん。
この二人のやりとりは決して愉快ではなく、白羽さんのキャラクターなんかはむしろ不愉快なのだが、どこか自分が感じていることに通じるところもあって読むのを止められなかった。
人が幸せと思うことをなぜ自分も幸せと思わなければならないのか。自分は自分らしく誰にも迷惑をかけずに生きていちゃいけないのか。
古倉さんほど極端ではないが、自分もそう感じることはある。
社会が求める人物像というものがあって、そこからはみ出している者は迫害か中傷をされる。
白羽さんほど破綻してないつもりだが、似たような理不尽を感じる自分が時々いる。
もちろん、コンビニの店長や妹のように他人を自分の理解しやすい姿に当てはめたがる自分もいる。

自分が社会に正しく属しているか、揺さぶられた気がした。


読み終わった直後はなんとなく物足りない気がしたが、たぶん古倉さんの価値観からもっといろんな社会を見たかっただけで、ラスト自体にはなんの文句もない。
読んでいて一切暖かい気持ちにも熱い気持ちにもならないのに、面白い小説は久しぶりに読んだ。

「TOKYO ART CITY」ヒカリエ

渋谷で1時間ほど時間が空いてたので覗いてみた。

(渋谷で時間が空いた時はとりあえずヒカリエの8階に行くのがオススメ。だいたい無料でギャラリーが見れる。これは9階だから有料だったが)

 

2012年に話題になった東京駅でのプロジェクションマッピングを巨大模型で再現した展示が目玉。

他にも都庁や空港など東京のランドマークたちが立ち並び、音楽とともに美しく彩られる。

ぼんやり見るだけでも非常に楽しめる企画展。

おそらく、映像は2パターンあるのかな?どちらも見たほうがいいが、全部の建物について2パターン見るのはかなり時間がかかりそう。

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東京駅も見ものだが、その横の国立博物館の映像も日本的で綺麗。

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(写真だとあまり伝わらず残念……)

 

ちょうどよい時間の使い方ができたなーって感じ。